「今日は早いんだな」
教室で一人、窓の外を眺めていると、翔の声が響いた。
「翔だって早いじゃん。 まだ誰も来てないよ?」
静まり返った教室を見渡し、言った。
「昨日は眠れなかったんだよ」
そう言った翔の表情は曇っていた。
「何かあったの?」
そう聞いても、翔ははぐらかして、答えてはくれなかった。
この頃から、翔が時折見せる、悲しげな表情が気になりだした。
何かあるなら話して欲しい、力になりたいと思った。
だけど、そんなのは私の自己満足で、翔の悲しみの理由を、理解できるわけなんてなかったんだ。
支えてあげることなんて、不可能だったんだ。
そう思い知らされたのは、ずっと後の事だった。
その日の放課後、葉月との待ち合わせへ向かう途中、勝手に付いて来た和希に翔の事を聞いた。
「ねぇ、なんで翔には彼女がいないの?」
「はっ?」
和希は、目を見開き驚いていた。
「ほら、だって翔は結構モテるでしょ? 翔に告ったって子、何人もいるみたいだし」
そう言うと、和希はいつもより低い声で言った。
「お前、まだ聞いてねーの?」
「何を?」
私には和希の言葉の見当が全くつかなかった。
「いや、聞いてねーんならいいや」
そんな風に言われると、気になって仕方がない。
だけど、何度もしつこく聞く私に、和希は
「こういう事は、本人から聞くもんだから。 俺から話すことじゃねー」
としか言わず、何も教えてくれなかった。
和希がここまでかたくなに口を閉ざしたのは初めてで、よっぽどの事なんだろうと察しはついた。
だから翔には聞けなかった。
「葉月、ごめん。 コイツも付いて来ちゃった」
カフェで待っていた葉月の元へ着くと、親指を立てて横に立つ和希を指した。
「俺は、葉月が彩に苛められないか、見張りに来たんだよ」
ため息を付きながら、和希は葉月の隣に座った。
教室で一人、窓の外を眺めていると、翔の声が響いた。
「翔だって早いじゃん。 まだ誰も来てないよ?」
静まり返った教室を見渡し、言った。
「昨日は眠れなかったんだよ」
そう言った翔の表情は曇っていた。
「何かあったの?」
そう聞いても、翔ははぐらかして、答えてはくれなかった。
この頃から、翔が時折見せる、悲しげな表情が気になりだした。
何かあるなら話して欲しい、力になりたいと思った。
だけど、そんなのは私の自己満足で、翔の悲しみの理由を、理解できるわけなんてなかったんだ。
支えてあげることなんて、不可能だったんだ。
そう思い知らされたのは、ずっと後の事だった。
その日の放課後、葉月との待ち合わせへ向かう途中、勝手に付いて来た和希に翔の事を聞いた。
「ねぇ、なんで翔には彼女がいないの?」
「はっ?」
和希は、目を見開き驚いていた。
「ほら、だって翔は結構モテるでしょ? 翔に告ったって子、何人もいるみたいだし」
そう言うと、和希はいつもより低い声で言った。
「お前、まだ聞いてねーの?」
「何を?」
私には和希の言葉の見当が全くつかなかった。
「いや、聞いてねーんならいいや」
そんな風に言われると、気になって仕方がない。
だけど、何度もしつこく聞く私に、和希は
「こういう事は、本人から聞くもんだから。 俺から話すことじゃねー」
としか言わず、何も教えてくれなかった。
和希がここまでかたくなに口を閉ざしたのは初めてで、よっぽどの事なんだろうと察しはついた。
だから翔には聞けなかった。
「葉月、ごめん。 コイツも付いて来ちゃった」
カフェで待っていた葉月の元へ着くと、親指を立てて横に立つ和希を指した。
「俺は、葉月が彩に苛められないか、見張りに来たんだよ」
ため息を付きながら、和希は葉月の隣に座った。
