ストロベリーフィールド

それからしばらくたったある日、校門の前に葉月が立っていた。


私に気づくと小走りに寄ってきて、笑顔を向けてくれた。


「彩ちゃん、久しぶり! 元気にしてた?」


「元気だよー! 葉月も元気そうだね」


隣にいる和希が気になりながらも、笑顔で返した。


「あのさ、今からちょっと時間ある? 話したいことがあるんだけど…」


「うん、大丈夫だよ」


そう答えると、葉月は私の腕にくっつき、和希に言った。


「じゃ、そうゆうことで。 ちょっと彩ちゃん借りるね」


「お…おう」


葉月の笑顔に戸惑いながら返事をする和希を置いて、私たちは歩き出した。






近くのファミレスに入ると、葉月はコーヒーとチョコレートケーキを、私はミルクティーを頼んだ。


すぐに運ばれてきたチョコレートケーキを、幸せそうに頬張る葉月が
あの頃と変わってなくて、少し嬉しかった。



「ねぇ、彩ちゃん。 翔くんと何かあったの?」


不意に出された名前に、手にしたカップを落としそうになった。


そんな私を見て、何か察したように葉月は話始めた。


「こないだね、翔くんに会ったんだ。 たまたま通りかかった公園に一人でいたの。 夜だったから、こんな時間に何してるのかな、と思って声かけたの。 そしたらね…」


言葉を詰まらせる葉月に、それまで俯いていた顔を上げると
視線がぶつかった。


葉月の真っ直ぐな瞳に、視線を反らせない。


「翔くんね、地元に帰るんだって。 和希と彩ちゃんを近くで見てるの、もう耐えられないって」


耐えられない…?
あれだけ笑い合ったじゃん。
翔にとって私たちとの時間は
苦痛でしかなかったの?
あの笑顔は、なんだったの?


「彩ちゃん、翔くんが好きなんでしょ? それはすごく嬉しかったって。 でも、彩ちゃんの気持ちが大きくなればなるほど、辛いって…」


「私の気持ちが…重かったってこと?」


「そうじゃないの。 和希の気持ちを知ってるから…」


和希…?


全く理解できない私を前に、葉月はコーヒーを一口飲むと
カップを見つめたまま言った。