ストロベリーフィールド

しばらくすると、鞄の中で携帯の着信音が流れている事に気が付いた。

慌てて鞄を開け、手探りで携帯を探し、電話に出た。

「もしもーし」

「やっと繋がった! 今、どこにいんだよ」

電話の向こうの和希が、苛立っているのがわかった。

「どこって…啓太の家だけど。 どうしたの?」

「マジかよ。 葉月が会いたいって言うから、彩の家まで来てんだよ」

そう言うと、和希は葉月と何度か言葉を交わし、電話を変わった。

「葉月、ごめんね。 せっかく家まで来てくれたのに」

「いいよ、気にしないで。 彩ちゃんと久しぶりに会いたかっただけだから」

葉月はいつもの優しい声で、少し残念そうに言った。


そういえば、葉月とは先月会ったきりだった。
和希から葉月の話をよく聞いてるから、実感はないけど。


私はなんだか葉月の事が気にかかって、翌日に会う約束をして電話を切った。

それと同時に、啓太がお風呂から上がってきた。

啓太はすぐに、冷蔵庫からビールを取り出し、飲み始めた。
私は、入ってくるね、と声を掛けお風呂に入った。





お風呂から上がると、ソファーでくつろぐ啓太の隣に座った。

「今日、彼女が泊まりに来るって言ったら、後輩が仕事手伝ってくれたんだ」

私を抱きよせ、啓太は言った。

「いい人だね」

私が微笑むと、啓太はそっと唇を重ねた。

「啓太…ずっと一緒にいてね」

啓太は、私の言葉に答えるように、強く抱きしめた。



その夜、私と啓太は、会えなかった時間を埋めるように、抱き合って眠った。

啓太の温もりと鼓動が、心地よくて、とても幸せな夢を見ていた。