ストロベリーフィールド

「ごめんな」

啓太は私を強く抱き締め、呟くように言った。

「許さないー」

泣き顔のまま言う私を、啓太は笑った。

「コンビニ?」

啓太は私の持っている袋を見て言った。

「ママ達、出かけてて一人だから」

「今度からは、携帯くらい持って出ろよ」

そう言われ、携帯をベッドに置いたままだという事を思い出した。

私は、準備してくると啓太に言い、家へ入った。
部屋に入ると学校の鞄に携帯と化粧ポーチを入れ、制服を持って家を出た。

啓太は車にもたれ、夜空を見上げてタバコを吸っていた。
「行くか」

啓太の言葉に大きく頷き、車に乗った。


啓太の家へと向かう車の中で、私はずっと啓太を見つめていた。

ネクタイを外したスーツ姿で、ハンドルを握る啓太の横顔が好きだから。


三十分ほど経った頃、啓太の家に着いた。
車を下りると、啓太は私の手を取り、エレベーターへと乗り込んだ。
啓太の大きな手は、懐かしくて温かい。


部屋に入ると、相変わらず綺麗に整理された部屋を眺めた。

キッチンには二人で買ったおそろいのマグカップ、洗面台には青とピンクの歯ブラシが並んでいる。
そんな些細な事に、幸せを感じた。

「なんか珍しい物でもある?」

二本並んだ歯ブラシを眺めて、ニヤついている私に啓太が言った。

「なんでもない」

なんだか恥ずかしくなって、素っ気なく答えた。

「風呂、先に入る?」

「ううん、後でいいよ」


そのまま部屋へ戻り、ソファーに座った。
すぐにシャワーの水が流れる音が聞こえ、私はテレビをつけた。