ストロベリーフィールド

毎日、何もせず空を眺めていても時は過ぎ、約束の日はすぐにやってきた。
だけど行く気になれず、約束の時間になってもベッドで横になっていた。

「彩!」

窓の外から聞こえる声に、和希だとすぐにわかった。
渋々ベッドから起き上がると、窓から身を乗り出した。

「今日は行かない」

「行くって約束しただろ!早く来い」

和希の笑顔が消えて行くのがわかった。

何も言わずに立っている私に、痺れを切らしたように和希は言った。

「とにかく来いよ。話聞くから」


和希の優しい声に、私は出かけることにした。

外へ出ると、雲一つない青空が広がっていた。
自転車の後ろに乗ると、和希はゆっくりとペダルを漕いだ。

「翔が好きなんだろ?」

和希の言葉に驚き、何も言えなかった。

「それくらいわかってるって。彩が自分の気持ちに気付くずっと前から」

和希の言葉が少しだけ嬉しくて、和希の背中に額を当てた。

「で?翔が好きだって気付いて、どうしていいかわかんなくなったのか?」

「……うん」

そう答えるのが精一杯だった。




駅に着くと、葉月と翔が二人で楽しそうにしていた。
葉月は私に気付くと、満面の笑みで大きく手を広げ、抱き付いてきた。

「彩ちゃーん。会いたかったよ」

そんな葉月を見ていると、自然と笑みがこぼれた。




電車に乗り、しばらくして見えてきた海に、和希と葉月ははしゃいでいた。

そして海に着くとすぐに、和希と葉月は海へと走った。

「彩は行かねーの?」

二人を眺めていると、翔は言った。

「私は見てる方が好きだから」

「俺も」

私たちは砂浜に腰を下ろした。


あれほど海に来るのが嫌だったのに、翔の隣で和希と葉月を見ていると、自然と気持ちは晴れていた。


「あの二人って、ずっと一緒にいるんだろうね」

子供のようにはしゃぐ二人を見つめたまま、翔に言った。

「どうだろーな」

翔の言葉は意外なものだった。