ストロベリーフィールド

それからの数日間、私は外にも出ず、和希や翔からのメールもほったらかしで部屋に引きこもっていた。

決めなきゃいけないこともあるのに、何も考えられず、ただ窓から見える澄んだ青空を眺めていた。


「彩!」

名前を呼ぶ声に窓から身を乗り出した。

「翔……」

太陽の光に目を細め、こちらを見上げていた。
その姿に胸の鼓動は早まり、顔が熱くなるのがわかった。

私は外へと飛び出した。

「どうしたの?突然……」

「何かあったんじゃねーかと思って。メールも返信ないし」

そう言って歩き出す翔に続いた。

「何もする気になれなくて……」

「そうか」

翔は笑顔を見せると、大丈夫と、私の頭に手を置いた。
その手は冷たかったのに、心は温かくなった。



翔の部屋に着くと、出された麦茶を一口飲んだ。

「一人で色々考えてたら、しんどくなっちゃって」

さすがに翔への気持ちを打ち明けることは出来ずに、進路の事を話した。

翔は私が話し終わるまで、黙って聞いていてくれた。

「なぁ、皆が自信持って進路決めてるわけじゃないんだぞ。不安で仕方ない奴だっている。それでも決めなきゃなんないんだ。前に進む為に。いつまでも、立ち止まってるわけにはいかねーんだ」

翔はまっすぐに私の目を見ていた。

「大丈夫。彩ならちゃんと決められる」

翔の"大丈夫"は魔法のように私の中に入ってきて、自信を持たせてくれた。

「ありがとう」

涙が溢れるのを必死で堪えた。
すると翔は私の頭に手を回し、そっと胸へと引き寄せた。

私は、あの日のように、翔の胸で涙を流した。