ストロベリーフィールド

今思えば、和希の異変なんて沢山あった。
だけど私は、自分の事に精一杯で、気付きもしなかった。


「卒業したらきっと、今までみたいにバカやったり、しょっちゅう会ったりできないんだろうね」


この楽しい時間がずっと続くなんて思ってない。
だけど、年を取っても三人で笑っていたい。

それが出来ない事がわかっていたから、急に寂しさに襲われた。


「そうだな」

和希の表情も暗かった。





翌朝、目を覚ますと和希の姿はなかった。
綺麗に畳まれた布団の上には
「葉月とデート」
と、汚い字でハートマークまで書かれた置き手紙があった。

なんだか気が抜けて、再びベッドへもぐった。

そして、ケータイに刺さった充電器を抜き、メールした。

<暇すぎて溶けそう~ 彩>

送信先は翔にした。
返ってくるはずもないと半ば諦めながら、送信ボタンを押した。

案の定、翔からの返信はなく、待受画面を見つめながら、気付けば眠りについていた。


ケータイの着信音で再び目を覚ますと、時計の針はお昼を回っていた。

<俺、もう溶けた。 翔>

真顔でメールを打っている翔の姿が浮かんで、一人で笑ってしまった。

<冷やして元に戻さなきゃねっ。 彩>

返信すると、すぐに翔から電話がかかってきた。

「もしもーし」

「マジでアイス買ってきて。 チョコ味の」

疲れた様な声だった。

「えーっ。暑いから外に出たくないもん」

「悪いけど、彩に拒否権ねーから」

笑いながら言う翔に、逆らう気にもなれなくて、結局アイスを買って行くことにした。