ストロベリーフィールド

「今、海に行く日の事、話してたんだよ。翔は都合の悪い日とかあるか?」

「いや、特に予定はねーけど…。日帰りだろ?」

「泊まれるほど余裕ねーからな。葉月の親もうるさいだろーし」

私と和希の両親は、放任的な所があって、連絡さえしとけば外泊は認めてもらえる。
だけど、葉月の両親は外泊は認めない。

和希は何度か葉月を連れ出そうとした事もあったけど、結局叶わなかった。





日が暮れ始めた頃、翔は帰っていった。

和希は、帰るのが面倒臭いと、泊まる事になった。

小さな頃からお互いの家に泊まっていたこともあって、ママはためらいもせずに私の部屋へ布団を敷いた。

年頃の男女が同じ部屋で寝るというのに、まるで危機感がない。



シャワーを浴び、部屋へ戻ると案の定、和希はベッドでくつろいでいた。

「和希は下でしょっ」

「いいじゃん、いいじゃん。彩も一緒に入るか?」

和希はおどけながら、掛布団をめくった。

「絶対やだ!和希と同じ布団なんて、何されるかわかんないでしょ」

「大丈夫だって。俺にも好みくらいあんだから」

そう言いながら和希はベッドを出て、床の布団に入った。

しばらくの沈黙が続いた後、和希は突然口を開いた。

「卒業したらどーすんの?大学行くとか就職するとか」

「さぁ…どうするんだろ?」

周りはみんな進路を決めていて、先生にも早く決めるように言われていた。
焦ってないわけじゃないけど、どの選択肢もしっくりこなくて、焦って決めても後悔するだけだと、自分に言い訳をしていた。

「さぁって、人事みたいだな。彩は勉強できんだし、無難に大学行けばいいんじゃねーの?」

和希は、鞄から出ていた参考書をヒラヒラとさせた。

「それくらい皆できるよ。 それに、今さら勉強しても間に合わないよ。和希はどうするの?」

「俺は、親戚の会社にでも雇ってもらう」

和希ですら、しっかりと進路を決めていた。

「翔は、どうするのかな」

「あいつは…どーすんだろーな」

和希の表情が曇った気がした。