ストロベリーフィールド

「なぁ、海に行く日、いつでもいいよな?」

ベッドから起き上がり、テーブルに置いてある雑誌をパラパラとめくりながら、和希は言った。

「いいよ。なーんにも予定ないから」

「じゃあ、後は翔の予定次第か」

「そうだね」

翔の名前を聞いただけで、昨日の出来事が思い出された。
そして、何故翔に会いに行ったのか考えていた。
和希は葉月とデートだったから?
翔は家にいるとわかっていたから?

どちらも違う気がした。
無意識に足が動いていたんだ。
一人で家に帰る事もできたのに。


私、翔に恋してる?

まさか、そんなはずはないと、ぼんやりと浮かんだ想いをかき消した。



そんなことを考えていた時、部屋の扉が開いた。

「彩、友達が来てるわよ」

ママに言われ、階段を下りると玄関に翔が立っていた。

「どうしたの?」

翔が家を訪ねて来たのはこの日が初めてだった。

「コレ、彩のじゃねーかと思って」

翔は手に持っていたピアスを見せた。

私は耳たぶを触り、ピアスがない事に気付いた。

「ありがとう。いつ落ちたんだろう…」

落ちるはずのないピアスを眺めた。

「じゃあな」

そう言って背を向けた翔を引き止めた。

「和希も来てるから、上がっていかない?」

「じゃあ、お邪魔します」



翔と部屋へ戻ると、和希はコンポの前でCDケースと睨めっこしていた。

その光景があまりにおかしくて、私と翔が笑い出すと、和希は照れたように笑った。

「どっちにしようか悩んでたんだよ」

そう言ってCDケースをヒラヒラとさせた。

「そんなに悩むようなことじゃないじゃん」

「俺はこっちだな」

和希は、翔の指差した方のCDをコンポに入れた。