ストロベリーフィールド

帰り道、翔はいつになく楽しそうで、鼻歌まで口ずさんでいた。

私は、力強い中にも優しさのある翔の歌声が好きだった。



「今日はありがとう」

家まで送ってくれた翔に言った。

「こっちこそ。 彩が来てくれたおかげで、綺麗な花火、見れたし」

私が笑顔を向けると、じゃあて手を上げ、翔は背中を向けた。


そして歩きだそうとした時、翔は振り返った。

「彩、頑張ったな」

ポンと頭に手を置き言う翔に、コクリとうなづいた。




翌日、啓太の家へ行き、ポストにペアリングを入れた。
カランと鳴る渇いた音が、なんだか切なかった。




家へ帰ると、玄関の前に見覚えのある自転車が停まっていた。

「おかえりー」

部屋の扉を開けると、和希がベッドでくつろいでいた。

「ただいま。どうしたの?」

「翔から聞いたんだよ、昨日の事」

「それで心配して来てくれたんだ。ありがとう」

顔を近付け言うと、和希は私の頬をつまみ、横へと引っ張った。

「こんな不細工な顔で泣いてたら、笑ってやろうと思ったんだよ」

小さな頃から、失恋すると和希はいつも側にいてくれた。
何も言わず、ただ隣にいてくれた事で、私は何度も救われた。



「和希は昨日、楽しかった?」

「まぁな。 葉月の浴衣姿が可愛かった」

思い出すように、和希は宙へと視線を向けた。

「惚気は聞きたくないー」

「彩が聞くからだろ!」



私はまた、和希に救われた。
きっと、一人でいたら啓太の事ばかり考えて、一日が終わっていた。
こんな時、和希の優しさが身にしみる。