ストロベリーフィールド

階段を上がりチャイムを鳴らすと、翔は笑顔で私たちを部屋へ通した。

玄関を入ると、テレビと机とベッドしかない殺風景な部屋が広がっていた。

「一人で住んでるの?」

ベッドに座った翔に聞いた。

「あぁ」

お菓子を食べながら、素っ気なく言われ、少しだけ寂しかった。

「葉月とはもうダメかもしんねー」

突然、和希が言った。

「またかよ」

翔は呆れたように微笑んだ。

「あー!マジめんどくせー!」

和希は大の字に床に倒れこんだ。

「葉月とは結構、続いてたのにな」


和希は彼女が出来ても、長続きしない。
長くて三ヵ月、短いと一週間で別れてしまう。
原因はほとんど、和希の浮気。
だけど、葉月とはもう半年になる。

「また浮気?」

「バーカ。浮気なんてしてねーよ」

からかう私に、和希は元気なく答えた。

「じゃあ何が原因なんだよ」

「そんなのわかったら苦労しねーよ。ホント、めんどくせー」

和希のうなだれる姿に、つい笑ってしまった。

つられるように翔も笑った。

「二人して笑ってんじゃねーよ。だいたい、お前が――」

和希は私に向かって何か言おうとして、言葉を詰まらせた。

和希の真剣な顔に、私は聞き返す事も忘れていた。


「まぁ、二人の事は二人にしかわかんねーんだし。和希が一人で悩んでも仕方ねーだろ」

翔の言葉はまるで、助け船を出すようだった。

「そうだよ。葉月と話すのが一番」

私は翔に合せた。
だけど和希は少し寂しそうな顔をした。

だけど、すぐにいつもの笑顔に戻って、三人で下らない話を延々としていた。

和希との心地いい関係に翔が加わり、こんな些細な事が時間を忘れてしまうくらい楽しかった。

三人でいる空間が、落ち着いた。

だから自然と三人でいる事が増えて、いつもの日々が楽しくなっていった。