ピュリファイ:お金がない!

「知らんね。」

おじさんは、豚しゃぶをほおばりながら、肩をすくめた。

「郵便局も、民間企業だからね。

 もし、切手まで無効とか言われるなら、これからは宅配便だけを使うよ。

 ま、食っちゃったもんは、違法とか言われても、いまさらどうしようもないなあ。」

おじさんは、おなか一杯になって、すっかりご機嫌だった。

ついでに今日は、純米大吟醸まで手に入って、顔を赤くして、色々と話してくれた。

「つくづく、裁判なんて、正しいものが勝つわけじゃない、て、弁護士になって一週間で、分かってはいたよ。

 悪い人に説教する、ではなくて、説得しやすい人のいいほうにしわ寄せする。記録をろくに読まずに和解を勧める、ていう裁判官が、昔から、日本には、とても多かったしね。

 国会議員なんていい加減なもんだ、てことも、分かってた。

 官僚は自分の老後さえ確保できればいいんだ、てことも分かってた。

 それでも、ガイコクよりはまし、と思ってた。

 でも、いきなり、三流国家並みになっちゃった。

 最近じゃ、裁判も、裁判官にわいろを持ってったかどうかで決まる始末だ。

 この仕事も20年やって、もう愛想も尽きてきたから、転職しようかな。」

冗談か本気か分からないことを、隣のおじさんは、言い出した。