ピュリファイ:お金がない!

その日の夜、おじさんとおばさんは、食欲のないあたしに気を遣ってくれた。

あたしのために、ハーゲンダッツのアイスクリームとか、最近はちょっと手に入りにくい、簡単に胃に流し込めるものを、用意してくれた。

エージとユリのためにも、豚の冷しゃぶとか、新鮮な果物、体によくて食べやすいものを、つまりはみんながほしくて値上がりしまくってるものを、用意してくれていた。

「ありがとうございます」

あたしは、お礼を言った。

「お葬式には出るな、家族も危ないから、て、警察の方に言われたので・・・」

あたしは、言い訳がましく、この場にいることを説明した。

「ま、日銀総裁の娘が、実は隣の家にいる、なんて、逆にちょっと想定外だよね。

 ここが安全だと思うよ。」

おじさんは、やさしく、微笑んだ。

「ところで、最近、切手が、あちこちで、現金代わりに使えてね。

 僕の事務所では、切手を買いだめしてたんで、急にお金持ちになったような感じだ。

 そういうわけで、今日の夕飯は、少し、豪華だ。」

「・・・それって、いいんですか?」

エージが、おずおずと、聞いた。