ピュリファイ:お金がない!

「あたしは、この国のお金なんて、信じて無かったわ。」

ゆりさんが、あっさりと、言い放った。

「だから、あたし、金無垢(きんむく)の時計や、金貨や、金のアクセサリーを、ためてたのよ。

 ほら、あの、箱の中よ。」

「おれは、ただの、アホか・・・。

 何もしてなかったよ。」

エージが、乾いた笑いを浮かべた。

「あたしは・・・

 あるものといったら、あの小銭かな・・・。

 でも、おとうさん、ズルしたんだね。

 自分だけ、知ってたんだ。」

「いいのよ。

 だって、十分でしょ。

 誰かにうらまれて、家までもされてるんだから。

 小銭くらい、もらっときなさいよ。」

ゆりさんが、にっこり笑った。

「変に責任、感じてるの?

 だったら、あたしたちが、全部、もらっとこうか?」

ゆりさんが、いたずらっぽく、付け加えた。




一晩があけた。



街はもう、ナイフやスタンガンを持たずに表に出たら、危ない、くらいの勢いだった。