ピュリファイ:お金がない!

正面の席に座っていた、2歳くらいの赤ちゃんをベビーカーに乗せた、若いお母さんが、急にあたしたちに話しかけた。

「10年位前、すごく暑い夏のときも、いろいろあったじゃない?

      エコカー減税が、期限の前に、急に終わっちゃったとか。

      銀行が突然つぶれて、あるお年寄りは貯金のほとんどをなくしちゃった。

      なんでそんなひどいことをするのか、ってくらい、官僚が、勝手なことばかりしてたじゃない?

      首相の言うことはころころ代わるし、首相自体がころころ変わるし。

      あの時よりも、ひどいくらいなんですって。」

若いお母さんが、子供をあやしながら、可笑しそうに言った。

あんまりひどいと、笑うしかないんだ。

「なんかもう、半日しかたってないのに、色々、預金から振り込める例外が決まったって。

 お給料は振り込める。国民の皆様のため、ですって。

税理士さんの報酬も振り込める。税務署のオービーが、税理士になってて、官僚を脅したんですってよ。

国会議員で、弁護士や医者が多いから、弁護士報酬や医療報酬も振り込める。

政治家への寄付金も、自由に振り込めるんですって。」

 
「・・・あはははは・・・

 結局、そーゆーことなんだ。

 偉い人だけ、絶対に、安全で、得するんだね。」

あたしは、笑った。

「あ、でも、首相は殺されちゃったじゃない。

 こんなこと言ったら悪いかもしれないけど、ずるいことするから、いけないのよねえ。」


ユリさんも、そういって、笑った。