ゆりさんが、帰って来た。

あたしたちは、男の子部屋で、あいさつした。

     「はじめまして」







でも、ユリさんの目は、いたずらっぽく、笑っていた。






ゆりさんは、きいた。

「で、どうする?

 身の回りの荷物とかも、もっていっていいレベル?」

「もちろん」

あたしは、答えた。

罪滅ぼしを、したかった。

     ゆりさんは、あたしのおとうさんの仕事を知っている。

     ゆりさんは、笑ってるけど、きっと、怒ってる。







     エージだって、きっと、そのうち、知ってしまう・・・。








「ありがと。

      あたし、この恩は、忘れないわ。

      あたし、きっと、あなたの役に立つと思う。」

ゆりさんは、あたしの手を、ぎゅっとにぎった。






ゆりさんは、いったん、自分の部屋にもどった。

そして、男の子の部屋にもどってきた。

手には、何かの、赤い箱があった。

20センチ四方くらいの、お菓子の空き缶だった。





「電車は動いてたよ。この家は、もう、さよなら。さ、出発!」

ゆりさんは、にっこり笑って、言った。