帰りのタクシーの中で、嵐はずっと私の手を握っていた。

時々、私の手を確かめるように強く握る。




タクシーから降りて、部屋へ戻ろうとすると

「今日はうち」

と言って嵐のマンションへと歩いていく。


私の手を離すことなく。


オートロックを解除して、エレベーターで12階に上がる。


鍵を開けると

「どうぞ。来客第1号」
と招き入れてくれた。


入ってびっくりした。


部屋だけは広く、生活感のないリビング。

部屋の隅には客からのプレゼントであろう山が出来上がっている。


「広い部屋だね。」

嵐はクローゼットからTシャツとスウェットを出して私に投げた。

「女物ないんだ。これで我慢して。俺シャワー入る。」

と言い残してシャワーへと消えた。

投げられた衣服に着替える。


自分の家とは違う洗濯物のにおい。
不思議だった。


ソファにからだをあずけて天井を見上げる。


だだっ広い

寂しい部屋

嵐そのものを現しているかのような。