「おかあさん。私、雄一と結婚する。」

嬉しさのあまり、すぐにでも誰かに教えたかった。



しかし




その一言を聞くなり、母の顔つきが変わってしまった。



「どうしたの?ここ喜ぶところなんだけども。」


母は眉一つ動かさない。



「そんなにびっくりしたの?」






「やめておきなさい。伊織みたいなおっちょこちょいじゃ警察官の奥さんにはなれない。迷惑掛ける前にやめておきなさい。」

そう言って私をじっと見つめる。


「どういうこと?」


「死んだお父さんは色々前科がある。そういう人が身内にいたら、彼みたいな出世コースの人の可能性潰しちゃうよ。私には詳しいことわからないけど、誰かに相談しなさい。」


意味はすぐに飲み込むことができた。


要するにヤンチャしすぎて生き急いだ父のお陰で結婚は出来ないって事か。



黙りこくる私に、母は言った。

「いろいろ調べられてから、彼と結婚出来ないとわかったら彼に迷惑かかるんじゃないの。酷なこと言うようだけど、釣り合ってない。辛いけどお別れしなさい。」



意味が飲み込めないまま、母は自分の部屋に戻っていった。



私はその日


雄一からの連絡に出ることも出来ず、
結婚できないであろう事実を受け入れながら
泣きながら朝を迎えた。