ベッドの上で揺れている。


天井の照明の形がはっきり見えないほどに。


揺れが止んで、徐々に視界がはっきりしてくると同時に心地いい重みを感じる。


雄一とセックスしたのは1ヶ月ぶりだ。
遠距離になってからは、月1の逢瀬になって1年が経つ。




「何考えてたの。」


そう私に質問を投げかけるのは、3年付き合っている愛しい男。



私が痴漢にあったときに偶然助けてくれた警察官であり、恋人。


私の腕の上に頭を預け、汗ばんだ体のまま横たわると口を開いた。


「そろそろこっちに来ないか。田舎の署に異動して初めて会えないことがしんどいなって思った。俺、伊織と結婚したい。」


普段、口下手な彼が始めて私の前で照れくさそうに頭を掻いて私を見つめている。


ずっと結婚したいと思っていたのは私のほうだ。
彼は誠実で優しくて、仕事も出来て申し分ない。
そして何よりもフィーリングが合う。


「よろしくおねがいします。私もずっと【下山さん】になりたいと思ってた。」


そう言って彼を見ると、嬉しそうに私を抱きしめ、


「まずはお互いの親に会って、それから職場に二人の事を報告するよ。」


私は彼からのプロポーズに舞い上がっていた。


このタワーホテルから見える、

宝石箱のような景色が

自分たちを祝福していると思えるくらいに。


24歳の夏。



私は幸せに包まれていたんだ。





今日までは。