ぶつかった拍子に私は滑って地面に転がった。

「ごめんごめん。大丈夫?」


手を引いて立たせてくれたのはいつかのホストだった。
セットした髪に白いスーツが良く似合っているけど、
コートも羽織らず寒くないのだろうか。


「大丈夫。痛かったけどね。」

そう言ってバッグを持ち直すと、彼は私のコートについた雪をまた払ってくれた。


「今帰り?」

私のセットした髪を見て彼は私を夜の女だと判断したのだろう。

「そうだよ。キミはこれから出勤?」


寒そうなホスト君は頷きながら



「お姉さん、俺のお向かいさんだって知ってた?」




そう言って私の手を引いて歩き出した。