そうこうしている内に一軒のフラットの前で車を止めた。

クルマから降りるとAC/DCが大音量で流れていた。

ミックはさっき買ったVBの1カートンを肩に担いで運んだ。

VB(ヴィクトリア・ビター)は初めて飲んだオーストラリアのビールでミックも好んで飲んでいた。

VBを担いだミックは玄関のチャイムを鳴らした。

周りを見渡すと玄関の前にはなんとプールがある。

しかしここは大屋敷ではなく、ただのフラットだ。

日本で言うアパート。

そこの住民もしくはそのゲスト達はそのプールを使用してもよいそうだ。

またしても驚いたが、なんでも喜ぶ女子高生みたいになるので平静を装った。

ミックは何度かチャイムを鳴らしたが出てこない。

すると玄関の隣の部屋の窓が網戸だけで開いていた。

そこからAC/DCの爆音が流れていた。


「苦情こないのかな?」


心配しつつも日本とのギャップに慣れていった。

ミックはVBが重いのか我慢できずに爆音が流れている部屋から入った。


「ヘイ!ロブ」


ミックが入ったと同時にロブが玄関から出てきた。

ロブはやさしい口調で


「ハイ・サマー、ハイ・ミキ」


と言った後、俺の方を見て「はじめまして」と、流暢な日本語で挨拶した。

するとミックがロブの後ろから


「ヘイ・メン!」


おどかす様に言った後、抱きついた。

ロブもハグしたあと「ヘイ・メン!」といって握手した。

この二人のやりとりを見ただけで仲が良いのが分かった。

実はミックには3つ年上の兄貴がいて、
その兄貴とロブは同い年で友達だったが気が付くとミックといる時間の方が多かった。

ミックにとって兄貴分みたいな存在のロブ。

髪は耳に掛かるぐらいのミディアムロングのブロンドでアロハを着たサーファー風。

なかなかのハンサムで日本語がきれいだった。