甘いものがあまり好きではない俺は

「ノー・サンクス」と言うと両手にチョコレート・ドーナツ持ち、
いやっ持つというよりチョコレート・ドーナツの穴に親指と人差し指でつかみ
下から上へと犬の様に喰らいついていた。

そんな食い方だからミックの顔は入園したての
ひよこ組のチビッコみたいにチョコレートまみれだった。

そのツラで店内を歩きながら何かを物色し始めた。


「だいたい店内でチョコレートドーナツ平らげる奴いるか?」


俺はものすごいカルチャーショックを目の当たりにした。

しばらくチョコレートまみれのまま、店内を歩いているミックがなにかを発見したようだ。


「あった!」


今度はアヒル組の子供みたいに元気良く答えてくれました。

授業参観に来ていた父兄の方達から大きな拍手がありそうなくらい立派な声だった。

なにを見つけたのかと近寄ってみると、なんてことない。

コンドームだった。


「なにもコンドーム見つけて、「あった!」って、そんなデカイ声出すことないだろー!」


英語が話せてたら俺は絶対忠告してたはずだ。

ミックはコンドームの会計を済ませるとメットを被りチャリにまたがり何処かへ行った。

俺もヘコンデルタにまたがり後をついて行った。

しかしここで俺は思った。


「メット被ってチャリ乗ってコンドーム運ぶなよ!」


なぜか俺にはメット被ってチャリ乗っている人を見ると、”マジメな青年”の様に見えた。

後ろからミックを見ているとコンドームを持っているようにはとても見えない。

しかしケアンズではメット被ってチャリ乗ってても、
これからセックスしに行く奴もいる事だけは覚えておこうと思った。

人は見た目で判断してはいけないのだ。