すっかりヘンな回想をしていると、すでに初出勤の時間が迫っていた。

義姉にもらったお茶漬けを急いでサラサラし、
茶漬けに入っていたおまけの浮世絵のカードを
ゴミ箱へぶん投げ、ヘコンデルタに乗り込んだ。

大汗をかきながらも、5分前には着いた。


「今日から俺も巨泉の一味か・・・ 」


少し緊張しながら開店前の店内へ入っていくとノリさんが迎えてくれた。

すると以外にも半分までとは言えないが、オージーのスタッフも多かった。

ほとんどのオージーは日本語が話せるらしいが、
逆に英語が話せない日本人のワーホリのバイトが結構多かった。

だいぶ英語にも慣れたとはいえ、俺もその中の一人だった。

しかしここケアンズでは日本人でもみんな笑顔で挨拶してくれた。

一通り挨拶し、店内から奥の事務所へ行くと
ノリさんの様なビジネスビザで働いている日本人社員が数名いた。


「がんばってね!」


「よろしくお願いします!」


声をかけてもらってまだ奥へ進むと、そこがストーレイジだった。


「ヘイ、ミック!」


ノリさんが声をかけても返事がない。

もう一度大声で呼ぶと裏口に通じるドアから一人の男が現れた。


「ミックなにやってたんだ!」


「ごみ出しにいってたんだ。」


しかしそいつが入ってきた瞬間、相当ヤニ臭かった。

外でサボってタバコ吸っていたのがバレバレなのに「ごみ出しにいってたんだ。」と言い切る。

それを見て俺は笑いそうになった。


「今日から一緒に働くアキ」


「ヘイ、メン!」と言って握手してきた。


こいつがこれから長い付き合いになるミック。

顔にはまだニキビもある、あどけなさが残る17才。

ケツポケットには常にクシを忍ばせ、金髪のショートヘアをいつも気にしている。

オージーのわりには小さく、背丈は165cmの俺と同じくらいだった。

24時間気取っているやつだが愛嬌があり憎めないヤツだった。

笑い方が独特で、ミックがいるだけで周りが明るい雰囲気になる。