翌日、いつもの様に俺の愛用のチャリ「ヘコンデルタ号」で街へ繰り出すことにした。

なぜ「ヘコンデルタ」というと、ここ最近タイヤの空気が減ってきて
俺はいつも独り言で「ヘコンデルな・・・」とつぶやいていた。

「ヘコンデルな」と繰り返していると「メコンデルタ」になり「ヘコンデルタ」になり
いつの間にかチャリに名前まで付ける様になっていた。

家ではイングリッシュ・オンリーなので話し相手もいず、つい独り言が多くなっていた。

しかし家ではブレットの英語ばかり聞いていたせいか何を言っているのかだいぶ分かってきた。

この間、久しぶりに親父と国際電話で話した時、相づちを


「うん、うん」


じゃなくて


「イェー、イェー」


と、打ってしまっていた。

親父は「なんだ!」とビックリしていたが俺はもっとビックリしていた。

英語が身に付くと夢も英語になるらしいが、俺にもいつかそういう日が来るのだろうか?・・・


「さぁ、今日はどこへ繰り出すか・・・」


街まではヘコンデルタで約20分、この時間はどうしても独り言をつぶやいてしまう。

いやっ、ヘコンデルタに乗っている時だけではない。

トイレに入っている時も例外ではない。

その日はなかなか出が悪く、「う゛~」と、いきんでいた。


「あ゛~、そーくかいたー」


と、デスメタルの様につぶやいた。

どういう意味かというと、業界用語を駆使してしまうということだ。

中学の時にダチの間では業界用語が流行っていて、なにかと言葉を逆さにしていた。


「そーくかいたー」とは「くそかたい」という意味だ。


例えば「ぱいおつ」なんてのは有名だ。

流行り始めの時はまだ先生も女子も意味がわからなかったので、

下ネタなんかは業界用語を使えばクラスでも堂々と話せる利点があった。