しかし駅から駅の間の灯りのない住宅街
に突入すると突然、窓越しに見えていた
明かりが失せ、窓は真っ暗になり、
鏡の様な状態になる。

俺の斜め後ろに立っていたオネエちゃんと
目が合い気まずくなることが多々ある。

途中から地下鉄に切り替わる
路線にも言えることだが・・・

気まずくて、決して乗り心地が良いとは
いえない山手線ではあるが、
これがないと寂しいものもある。

それは車内アナウンスだ。

この電車にもアナウンスはあるのだが、
ただ低い声で「キングスクロス」
というだけだった。

それに比べて山手線の電車はどうだろう?

鼻にかかった声、あんなにキテレツで
想像力をかき立ててくれる
「怪声」は世界中どこ探しても無いだろう。

「次は高田馬場」と、人間業とは
思えないような声の質。

想像力をかきたてる肉声。

しかしあの声を聞いていると、
いくつもの疑問が湧いてくる。


「いったい、どこから
そんな声が出るのか?」


「練習量はどれくらいか?」


「専属ボイストレーナーはいるのか?」


「あんな声が出るまで通常
どれくらい掛かるのか?」


「もし練習してもあんな声が出なかった時、
辞めさせられるのか?」


「どうしても、あの声が出せなかった人は
鼻にティッシュを
詰めてごまかしているのか?」


「声の質で給料の格差があるのか?」


「妻の前でもあの声なのか?」


「イク時も、やはりあの声なのか?」

想像するだけでどんなコメディアンよりも
笑わしてくれるだけの力を持った声だ。