そのホテルはとても長居できそうにない
物件でゴキブリは
覚悟しなければならなかった。

おまけに荷物を置き街へ出ると、
早速この街の洗礼を受ける事になる。

ATMの前にニュースペーパーを広げその
場所を陣取ったホームレスの男が
寝転んでいる。

これからか出社しようとスーツ姿の
人達が眉をひそめ、触られないように
避けて歩いている。

そのホームレスは自分の前に瓶を置き
突然大声で叫んだ。


「俺はホームレスだ!金をくれ!」


と、大声で叫んでいた。

俺は「なにを威張って言ってるんだ!」
と少々腹が立ったが、
その桁外れの開き直りにあ然とした。

山谷を知っている俺でも
この威張り方には驚いた。

なんの迷いもなく「俺はホームレスだ!」
と言い切るところはハンパではなかった。

しかも「金よこせ!」と怒鳴り散らす。
何がこの男をそうさせたのか? 

気分を変え、食事ができそうな
レストランを探した。

考えてみたら、俺達はまだ朝からなにも
食べていなかったのだ。

しかしまだ10時ということでパン屋か
コンビ二しか開いていなかった。

そうしてこの街をブラブラしていると、
どうも今までの場所とは雰囲気がちがう。

街はゴミがよく落ちていたり、
人々もあまり親切ではない。

特に女の人は眉をひそめ近寄りがたい。

「なにかが違う・・・」

夜にもう一度街に出てみて、
それがわかった。

よく目にするのが「ストリップ」だの
「アダルト」という文字。

要するにそういう店が軒を連ねているのだ。

日本で言えば新宿にあたるのかもしれない。

今までオーストラリアといえば
青い海とビーチ!

そこをローラースケートでさっそうと
走る金髪のオネエちゃん。

まるでサンキストオレンジのCMの様な
イメージだったが、ここはまるで違う。