階段を上り2Fへ上がる途中、ノイジーなギターの音が聞こえてきた。

入り口のドアを開けると爆音が飛び込んできた。

左側にはステージがあり、手前のフロアでは地元の客達たちがバンドにあわせて踊っていたりした。

破れたジーンズに金髪をなびかせブルースで踊る光景など日本ではけっして見る事はできないだろう。

ステージの右側にはビリヤード台が2台あり、音楽そっちのけでプレーしている者もいた。

その奥にはバルコニーがあり、夜景を楽しみながら一杯やることもできるみたいだ。

俺達は一通り店内を見物しウェイターのおネエちゃんにビールを頼むと次の曲ブラウンシュガーが始まった。


「おっストーンズだぜ!」


ストーンズ好きの兄貴が少し興奮気味に叫んだ。

俺達はビールを飲むのを忘れ、30分ほどジーっと見ていた。

ふとステージの前列を見ると70代の老夫婦がノリノリで見ている。


「イカした老夫婦だな!」


ストーンズやジェイムスブラウンで踊る老夫婦を日本でお目に掛かるのは不可能ではないか!

しかもじいさんの方は車椅子で来ている。


「なんて開かれた国なんだ!」


そのじいさんは「わしにも楽しむ権利がある!」と言わんばかりに楽しんでいた。

年寄りだろうが車椅子だろうが誰もが主張している。

その時俺は共存ということを肌で感じた。

バンドの演奏も終盤にさしかかる頃にはバンドのリーダーがギター
でその人物がジョノだと言うことが分かった。

演奏が終わると自分の中に何か熱いものを感じた。


「よし!ケアンズで絶対バンド組む!」


ビールをピッチャーで頼もうかと隣の兄貴の方へ向くと居ない。

しかたなく1人でビールを買いに行くと兄貴がバルコニーで日本人と話している。

その日本人達は男2人女1人とその男達の友達のオージー1人で、数少ないテーブルを独占していた。

男達は無精ヒゲを生やし地元に馴染んだ服装をしていて、既にでかいピッチャーを5つ飲み干していた。