ノリさんの計らいでOKバンド
は俺達の1つ前だった。


「練習もせず大丈夫か?」


俺は心配したがその直後、
失敗して初めてわかるだろう
という気持ちになった。

OKバンドの出番の前には
客もだいぶ入っていた。

ネズミ野郎以外のメンバーは始めての
ゴングショーとあって顔はひきつり、
話もロクにできない状態だった。

ネズミ野郎はというと、アホなのか
緊張感ゼロで一人ではしゃいでいた。

しかし俺は酷い演奏になることはわかっていた。

なぜなら経験不足で練習もしない。

上手くプレイできるはずはない。

上手くプレイするには練習量と自信だ。

しかしOKバンドは遊びで
やっているだけなので、
あまり関係ないかもしれない。

いよいよ初演奏となるOKバンド
がステージに上がった。

ネズミ野郎以外は相変わらず
顔はひきつっていたが、
ジョノが盛り上げてくれていた。

そして演奏が始まった。


曲は「アナーキー・イン・ザ・UK」


ネズミ野郎はとびはねりながら歌っていた。

やはり演奏は酷いもんだったが、
それでも会場は盛り上がっていた。


しかしこの後、衝撃的な瞬間が訪れた。


演奏は終盤へ突入しようとした時だった。

1人の男がいきなりステージへ上がり、
大声で叫びながらネズミ野郎の
マイクをグイグイ引っ張り出した。

一瞬ネズミ野郎とその男はマイクの
取り合いみたいになっていた。

どうやらその男はそのマイクを
取り上げるつもりだったらしい。

ジョノやセキュリティー2,3人が
ステージ上へダッシュで上がり、
その男を羽交締めにし引きずるように連れ出した。