ひいやああー。なんだなんだ、この急勾配。なんだか初めと違うよー。

 あたし達は流れる川の下流へと向かって走っていた。どこから増水したのか、水の勢いは増すばかり。

「ねっ、ねえ! いつからこんな、激流にっ、様変わりしたのっ」

「……」

 んもー! だーれも返事すらしやしない。まあ、のんびりしてられる場合でもないしね。おおよそ地下水脈が地表に吹き出してるんだろう。とうとう滝にさしかかったとき、誰からともなくため息が漏れた。

 あたし達はがんばった。でもこれじゃあ、自力で逃げることも、泳ぐこともできはしない。下を見ると逆白波が彼方に見える。あたしたちのいる岸の両側は切り立った崖で。たっかいんだ、これが。ものすごく。


 そんなあたし達にとんでもない僥倖が。