天翔る奇跡たち



「あーはいはい」

 あたしはあたしで、エネルギー溢れる金竜さんのお世話は骨折りかと思っただけ。

「いらないなら、別にいいのよ。ハイ。子守に欠かせない回復アイテム、ソルジャーI」

「あんなあ、このオレが全力で面倒見てんのよ? そんなもの、今更きくかよ」

 なあんだ、そっか。あたしはそれを入り口の外に置いてきた。不思議なことに、次に通りかかったときには、疲労回復薬は無くなっていた。誰か飲んだのかしら。

 まあいっか……あたしはその日、昨日の二倍、「ソルジャーI」を置いて出た。それだけじゃない。あたしの罪は……どうして確かめもせず部屋の前を通り過ぎてしまったのか。


 そういえば、がちゃがちゃ物音が聞こえていた。決して友好的なお友達とゆったりお話ししている感じではない。

「どうしたの?」

「がなしゅー、なにしてあそんでるのおう?」

「わああっ、くるな、くるなああ!」

「まーッ、来るななんて、どういう事?」

 紫のヴェールを払いのけると、そこには……ちまちま駆け寄ろうとする吉弔を避けながら、ガナッシュが走り回る姿が……

「く、喰われるッ」

 あたしはその有様を見て、

「なによ、そんなに大げさに騒ぐ程のことも無いじゃないの」

「アホォ! オスに懐かれてもうれしくねえ! こいつら、共食いするんだぞ!」

「共食いじゃないよー、知識を一つにしてるだけー」

 甲高い声できゃいきゃいはしゃいでいる吉弔の顔が、ガナッシュの脇腹から腿から頭から、ぽこぽこと体内へと出たり入ったりを繰り返している。こわい。

「平気だよー、いたくないよー、コワクなーい! キャハハッ」