「あ、あのこれ……良かったらどうぞ」
あたしは立ち上がってハンカチを出した。使ってくれるかな。大丈夫かな。でもでも、ハンカチ自体は洗いたてだから大丈夫……干しっぱなしだったけど。
「ぷはっ」
なにこれ。あたしは聞いたこともない音を聞いた。フシュアー! と、気球からガスが抜けてくみたいだ。でもでも、本当に聞いたことないのよ?
「え? もしかして、ジャガー……さん?」
笑ってるの? ええーっ。たった今まで涙こぼしてたのに?
「参りました。アップルさん? 合格です。これから女王様との謁見の間にご案内いたします」
どーいうことか、説明は!
「ふふっ、こちらへ来たときあなた方は疲労で気を失っておしまいでしたね。それではご存じなくても仕方がないことでした」
そういって、ジャガーさんは口調を改めた。
若者キャンプでリーダーが説明と点呼とりにならす、ホイッスルに身を正すときのようだ。
「私の仕事は幼い吉弔の面倒をみること。年がら年中仲間同士、思念を送りあっては怒ったり泣いたり、一喜一憂するんです」
可愛や、と眼を細めるジャガーさん。
「本人達には最優先事項なのに相手に伝わらないとか、思いもかけないところで傷ついたり傷つけたり。苦労はするんです、あれでも」 ジャガーさんは仕方なさそうに笑んだ。
「え? じゃあ、ガナッシュが言っていたのって……」
「彼は天才です。一瞬にして吉弔たちに必要なものを取り出しては与えて、ここら辺ではとんと見かけませんよ、そういったひと」
本当に人間なんですかねえ、彼……と、少々いぶかしむ様子でジャガーさんはしめた。
まあ、ドロップスの面倒見てるときも子守は天職みたいなもんだと言っていたし。それで今回もすっかり預けてしまっていたんだけど。そうかあ、彼、亜竜人にとっても希有な存在なんだねえ。
ジャガーさんにまで感心されて。うん。すごいすごい、いつか彼は他の人々の間に立ち、異種間同士のかけ渡しをするようになるんじゃないかと、あたしはひそかに思っている。



