天翔る奇跡たち



 へえ? 外に出るの? ちょっとやだな、まだ寒いから。でも仕方がない。

「お話しになりたいことがあるのでは」

「ああ、あんたのいないところでゆっくり、な」

 ジャガーさんは不服そう。

 どうでもいい、ささいな彼の思念を読み取ってしまったのだろうか。

「そんなこと、しませんよ」

 ぎくっ

「けっ、どうだか」

 ガナッシュ、きつぃな。ていうか、今普通に会話してなかった? 念話?

 何もわからずあたしはガナッシュの後ろを見ながら後についてく。

「翻弄されてんじゃない! お涙ちょうだいも聞くな」

「えっ、何でそんなこと。あのひと悪そうじゃないし」

「ペースに乗るなっていうんだ。あいつは水が欲しいといったら、漏斗を出してきて、雨水を飲め、ってんだぜ?」

それってどういうこと?

「下手すると、われわれは依頼なんて知らないしギャラを払う気もない、とか言いそうだ。宿の代わりにしたんだから宿代だせ、とかな」 くそう、これくらいなら厩舎のがましだったかもしれねえ、と彼はぶつぶつやりはじめた。

「うんうん、それはそうかもしれないよ? なんだけどね、あたしあの人を信じたいのよ」

 ついでにあたしは契約書の複写をお願いしたいんだよねえ……

「今がチャンスだから、行ってくる」

「あ、こらまて! ひとの話を聞けー!」



 ガナッシュはそう言うけれど、あたしはなんだか気の毒な気もしている。

 ひとの心を読むって苦しいんじゃないかな。ガナッシュみたいなひともあるかもしれないしね。偏見とかも、あるかも……なんて考えていると。

「あるんですよ、本当に」

「うわわっ……そこにいらしたんですか、ジャガーさん。あっ、あたし、失礼なことを……」

「いいえ、当然のことでしょうから。人間にとって竜の角をもつ亜竜人は……」

 そういった瞬間、彼はどっと決潰したようにまぶたから涙をこぼしはじめていた。