天翔る奇跡たち



 こんなふうに思うのはきっと、あたし達がはじめて遭遇した竜が、ダイノダイアさんだったからかも知れない。断りもなく彼女があたし達の心を読む、なんて事も絶対に、なかった。

 あの幼げな体つき、秀でた額つき。小さな頬、助けを求めるきゃしゃな手。全身でぶつかってきたあの彼女は本当は一体、誰に、何を求めていたのだろう。それを思ったら、胸の辺りが重くなってしまった。

「その応えは選ばれた一部の亜竜族にしかわからないのです……哀しいことに」

 また、読まれてしまった……。

「それでも、わたくしは姫の役には立てなかったのですね。打ち明けてもくれなかった。もし姫が出奔すると知っていたら、絶対……」

 絶対に、どうするって言うのだろう。この部屋から出さない? それならなおさらダイノダイアさんの気持ちがわかるわ。軟禁状態じゃないの。いくら広々とした部屋だって……広いな、本当に。誰がなにに使うんだろう。

「あの、このだだっ広いお部屋は何に使うものなんですか?」

「もちろん、多目的に造られております。使いたい者が使いたいだけ、多くは間仕切りを使って、寝たり食べたり、遊んだりとね」

「ははあ、これは……」

「無駄がないでしょう」

「たとえばどういう風になるんですか?」

「え?」

「姫竜さん、一体どのようにして抜け出したのでしょう。彼女のお部屋は、ここから比較的、あの、近いのですか?」

「もちろん姫は騒がしいのはお嫌いですから。わたくしどもが離れに別室を用意させていただいております」

 黙っていると、ジャガーさんがうっすらと目を見開いて、言った。ガナッシュに道をあけて。

「あ……、どうぞ」

 赤毛のロングヘアがさらさらと額にかかって、その緑色の瞳の色を隠すかのように陰をつくっている。

 と。あたしはだいぶ慣れてきたからいいんだけれど、ガナッシュがなあ……いっこうに、なじまない。さっきからもずーっと難しい顔つきのまま、それを崩そうともしない。


「アップル、来い」