「わたせ、と言うておる!」
「いやだ、とこう申し上げているのですよ、オレは」
先ほどの不毛なやりとりがまた始まろうとしている。そこであたしはようやく見つけた契約書を取り出して 言ってやった。
「いいですか、ご母堂。彼女は、ディノーディアさんは。わたくしたちと行動を共にする、命を預ける、と約束してしまっているのです」
思い切り声を張り上げ、滝の音に負けまいとさらに大きな声を出した。
「協会発行のこの書面に彼女のサインがある限り、契約は履行されねばなりません。それがわたくしたちの仕事であり、誇りなのです」
あ、最後局長の受け売りだあ。緊張しちゃうとダメだなあ。でも言うことは言った。竜の女王様がなんて仰るのか、わからない。
「くくくく、馬鹿なこと。そんな紙切れに書き付けられたサインなど意味はない。ドラゴンの約束は絶対だ。書き付けなどいるものか」



