そう言いあたしはヤツの瞳を漏らさずに見つめた。

「………」

 ヤツは何か言いたそうにあたしから目をそらした。

「あたしは精一杯、話したでしょ腕の傷のことも家の事も…」

「…ごめん、悪かった」

「いいよ…あたしもごめん」

「…また明日な」

 そう言いヤツはそらした目を戻すことなく走って行った。

「ありがとう…」

 走ってくヤツの背中を見ながら、あたしは呟いた。