トントンと母親が味噌汁の葱を刻む音で目覚めた。
もし、“タイムリミット”が“死”を意味してるなら、これが最後の『お袋の味』だと思うと、一口、一口味わいながらゆっくり食べたかったが、涙を堪えるのがやっとだったので、つい、早食いになってしまった。
早々に、食事を済ませると、支度をして、家を後にした。
僅かながらのお金を、父親の仏壇にお線香代として置いて来た。
僕に出来る精一杯の親孝行のつもりだった。
『ありがとう』も『さよなら』も言えないまま、バスに乗り込んだ。
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