彼女からの連絡を待ちながら、銀座の街をぶらついていた。



昼はハンバーガーショップで済ました。彼女からいつ連絡が入っても行動に移せる様に。



時刻は4時を回った頃、母親から『ありがとう』の電話があった。



もしかしたら…僕は言いかけた言葉を飲み込んだ。



どうしても言い出せなかった。『お袋、ごめん!』と、心で呟いた。



これ以上待っても連絡は無さそうだから、彼女の家にアパートに行って見る事にした。



池袋から私鉄に乗り換え5つ目の駅で降りる。



何度となく通ったこの道も、今日はやたら遠く感じた。



“何が有っても、現実を素直に受け止めるんだ”と自分自身に言い聞かせながら、彼女のアパートの前に来た。



玄関の前に立ち呼び鈴を鳴らそうとした時、中から話し声が聞こえ、慌てて指を止めた。



僕の居場所は、もうそこに無い事を知った。



夕日が沈み掛けたせいもあるのだろう。



とてつもない孤独感が、僕の心を支配していた。



そして、通りすがりの、飲み屋に入って、飲めない酒を、無理して飲んだ。



気が付くと朝だった。



消毒用のアルコールの臭いがした。



僕が目を覚ましたのに気付き、看護士がこちらに来た。
「もうダメですよ。飲めないのに、あんな無茶したら!」



あれから、急性アルコール中毒を起こして、救急車でここへ運ばれたらしい。