三つの月の姫君

 

「これは、おまえの趣味か」


 トランクの予備に一本、安っぽいネクタイが混じっていたらしく、ミスターは冷たく言った。
 

 青年は顔を紅潮させながら、小さな声で恥ずかしそうに「はい」と応えた。


 ミスターのサドの血が騒ぐ。


「おまえが身につけろ。いや、オレに着けさせろ」


「は、はい」
 

 もう慣れている、という手つきでミスターは彼にネクタイを着けた。


 そうしている間は全くといっていいほど青年は動かず、静かにしているので、比較的楽な部類の仕事なのだった。


 そんな青年の、前屈みの姿勢は苦しかったはずだが。


 なにせ、身長差がある。


「さて……と」