三つの月の姫君


 ミスターは、なにか甘い香りをかいだ、と思った瞬間、意識を失っていた。


「ん? 夢を見ていたのか?」
 

 と、思って目を覚ます。


 ミスターは、


「ん?」



 見回すと彼は遡上の上。


 何も碑名を書かれていない台座の上である。


 もっともその意味が即座に理解できるほど自覚があるわけじゃない。


 魔物は面食いなので男だろうが女だろうが、女神に差し出すのには差し障りなかろう、と考えたのだ。


 自分が尊いと思うものを捧げるつもりらしい。


 女神が乙女以外を巫女としないということであれば、宦官という手も。


「ここは、どこだ」


 ぶるっと身を固くしていると、自分が下に敷いてしまっているのは純白のヴェールだったと気付く。


「まさか、これを身につけろと言うのか?」


 彼のプライドは著しく傷ついた。