三つの月の姫君

「で?」


「で、とは?」


「僕はどうすれば良いんですか、このままじゃフィリアを探すのもままならないし、ミスターの服は調達しなくちゃならないし」


「いや、オレのことはいい。しかしフィリアはもう……」


「生きてなくてもいいんですよ」


「なに?」


「生きてなくったって、僕の恋人ですから」


 青年はそう言って、青ざめた唇で、笑った。


 ミスターには彼の目の下のくまが色濃く映った。


(こいつの方はうまくいったろうと思ったのに、空元気はおんなじだったか)
 

 青年は今にも崩れ落ちてしまいそうに、カタカタと震えていた。


(しかたがない。あの手でいくか)


 青年は目の前で破裂音を聞き、意識を失って転倒した。


 必殺、猫だましである。


「しっかし、これにやられる人間はなかなかいまい。稀少だが、とりあえず役には立ちそ
うにないな。オレは自分の服を探しに行くか」


 被ってきた穴あきのシーツで青年を巻いてしまうと、ミスターは自分は全裸のままで、
さっさと彼をおいて去ってしまった。