あした、またここで

-----ルカがいなくなって半年。

もともと細身のりなが見る見る痩せて行くのが見ていて辛かった。

俺とルカは同期で、新人賞争いをしたときからずっと一番のライバルだった。

ルカは大きな売り上げを上げられるプレイヤーだったけれど、傲慢で自分勝手な性格のせいで、毎月の売り上げがバラバラだった。

りなが太客に育ってからは売り上げも性格も落ち着いたけれど。


「直哉さん、あの子誰ですか?飾りとかキープめっちゃあるけど。」

「あの背の高い細い子?」

「そうそう!あのなんか地味な子!」

いちいち悪い言葉を選ぶのはワザとなのか天然なのか。

先月新人賞を取った優希が子供のように無邪気にたずねる。

アイドルのようなルックスに弟キャラ、自分の生かし方をよくわかっているうちの店の期待の新人。

「あれはりなちゃん。前にいた従業員のエースだよ。」

「まじっすか!?ラッキー!じゃあ俺あの卓付けて下さいよ!フリーっすよね!?」

「ごめん、今日は久々だから知り合いだけ付けるように頼まれてんだ。」

「は?ないっすよそれ。まじテンション下がるわぁ。」

本当はそんな事は頼まれていない。

今は誰にも触れさせたくなかった。

りなは今にも壊れてしまいそうだったから。

『弱っている時こそ女は落としやすい』

そんな事はわかっていた、優希をつければ少しは寂しさが紛らわせたかもしれない。

それでも彼女を追い詰めるような状況はつくりたくなかった。

「内勤どころかホスト失格だな。」

状況を見ていた代表は俺の頭を軽く叩いて優しく笑うと、営業用の酔っ払いのようなテンションでりなの卓へ向かった。