「大丈夫だよ、ライブハウスは駅から近そうだし。怖くないって」

「うん、だよね!」

菜美に励まされて、ちょっと元気が沸いてきた。



確かに、ライブハウスは駅の目と鼻の先だった。

「ほら、ここだよ~」

ライブハウスNina、鮮やかなネオンサインで描かれているけど、意外と見た目はこじんまりとした、小さなお店だった。

入り口にはベタベタといろんなライブのビラやバンドの宣伝チラシが貼ってある。


「今日のバンドって、これじゃない?」

菜美が入り口の立て看板を指差した。




Today's と書かれた看板には、


 “Grid Powers”   &    “陽風”



“はるかぜ”

これが陽斗のバンドだ、あたしはそう確信した。



陽斗の「陽」を取って付けたんだ・・・。

バンドの名前を言ってくれなかったのは、もしかしたら自分の名前が入っているのが恥ずかしかったからかも。


そう考えると陽斗がかわいく思えて、思わず笑ってしまった。


その時、

「・・・彩香か?」