ウソ・・・。
ずっと会いたかった声が突然あたしの前に現れた。
「彩香。」
その声はあたしを呼ぶ。
照れくさそうに、ぎこちなく。
「陽斗・・・、声が戻ったの?」
あたしの声の方がよっぽど細く頼りない。
大きな声を出したら、またシャボン玉のように陽斗の声が消えてしまうんじゃないかという気がして。
「さっき戻った。晩飯にプリンがついてて、『おっ』って思ったらそれが声になった。」
「何それ・・・、しょうもなさ過ぎる・・・。」
思わずあきれてしまったあたしに陽斗は、
「しょうもないってなんだよ~、おめでとうとか言ってくれないの?」
「待ってたよ。」
間髪いれずあたしは言った。
「早く戻ってくるようにお祈りして、ずっと待ってたよ。」
陽斗はまぶしいものを眺めるように、目を細めてあたしを見た。
「ありがとう。」
そしてあたしの方にゆっくり右手を伸ばした。
「喉をふさがれてる間、ずっとそれが言いたかったんだ。彩香、ありがとう。」
好きな人の声は、どうしてこんなに心地よく気持ちにしみていくんだろう。
その声が、心にじわりと広がって、そしてあたしを泣かせるんだ。
あたしもずっと言いたかった言葉を言うよ。
「お帰り、陽斗。お帰りなさい。」


