あたしが手を握るとき、陽斗はかすかにうなずいてくれる。
嬉しいのかな・・・。
でも、それ以上のことができない自分が悔しいし、もどかしい。
精一杯、陽斗に向き合いたいけど、陽斗の気持ちに本当に寄り添っているのか、自信がなかった。
音楽ができなくて、声も出ない陽斗。
どんなに辛いんだろう、苦しいんだろう。
陽斗の目を見つめるたびに、その苦しみをせめて自分もちゃんと感じたいと思う。
でも、あたしの気持ちが陽斗を少しでも楽にしてるのかな。
あたしの祈りは届いてるのかな。
そんな風にふわふわした心もとない気持ちのまま、秋の時間はゆっくり過ぎていった。
陽斗が入院してから一週間あまりが過ぎたある日、いつものように学校帰りに病院に寄った。
今日も練習が遅くなったから病院までダッシュだ。
「はあ、もう歳かも・・・。」
息が荒いまま、陽斗の病室のドアを開ける。
「陽斗、来たよ~・・・。」
フワッと、夕ご飯のかおりが鼻をくすぐった。
上半身を起こした陽斗は食事のプレートを前に笑顔を見せた。
あれ・・・、なんかいつもと様子が違う。
ふとそう思った時、
「・・・彩香。」


