あたしが彼の二番目になるって決めたんだから、ぐちぐち言っちゃダメだよね。

ちゃんと"都合のいい女"になってなくちゃ。

だけど彼はあたしの髪を撫でた。

「確かに俺は家族を裏切ってるけど、だけど…人を好きな気持ちってどうしようもない事もあるだろ…?ヒナは分かってるだろ?」

「うん…」

「俺はね、ヒナが俺の子供を産んでくれたらいいのになって…美雪がヒナだったら良かったのになって何度も思ったよ」

「本当に?」

「どうして美雪と子供作ったんだろうって…どうして結婚しなくちゃならないような事しちゃったんだろうって何度も後悔した」

彼はコーヒーを飲んだ。

目が真剣だった。

「今でもね、嫁に疑われてんのにこうやってまたヒナをアパートにあげて一緒に過ごしてんのはどっかでバレちゃえばいいのにって思ってるのかもしれない…でもそれってヒナを巻き込む事になるし絶対にダメなんだけど…俺、オカシイよな?」

あたしは彼を抱き締める。


「俺の人生ってなんなんだろう…ヒナを幸せにしたいのに…ヒナと幸せになりたいのに…」


「あのね…あたし、タカと結婚は出来なくても、タカとずっと…今はずっと一緒にいたいって思うの…」


決して結ばれない運命でも、

それでも。


あたしは愛してる。

彼もそうなら、あたしは幸せ。