病室に戻ると千昭くんはすやすやとベビーベットで寝ていた。
「かわいい~…」
あたしはベットを覗き込んで思わず口にした。
本当だ、彼に似てる。
「水月さんは若いよね?いくつ?」
「あたしは19です」
「19歳なんだ!じゃあ高校卒業してすぐ働き出したの?」
「え…まあ…」
「偉いね~」
彼の奥さんに会ってしまった事にどんどん後悔していく。
真っ白い肌に、大きくて綺麗な瞳。
優しい声と、幸せそうな笑顔。
あたしがもの凄く「黒い」ものに見えてしまう。
奥さんと知り合いになってしまった…
あたしは彼を横目で見る。
目が合うと彼はにこっと笑った。
やめてよ、ダメだよ、こんなの。
女の人ってすぐに分かるんだから。
あたしは顔をそらす。
「あまり長居しちゃ悪いですし、奥さんもまだ体調戻ってないしゆっくり休んで下さい。あたしはそろそろ帰ります」
「あら、そう?」
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ、可愛いお祝いありがとうね」
「はい」
あたしはまたお辞儀すると彼も見ずにそそくさと病室を後にした。
