自由のギフト

｢失恋ですよね。
話しは聞くけど自分がなると結構きついですね。初めてなんです｣
始めての失恋、僕もそれはしっかり覚えていた。
中学生の時、毎日初恋の相手に逢いたくて学校へ通っていた。

急に中学に上がると男女の間に距離ができ、意識し始める。たった二つ上の三年生が僕にはやけに大人に見えた。
そんな中学生の始まりに、席が良く近くになる彼女をだんだん意識し始めた。
いつしか授業中も休み時間も彼女を目で追うようになった。
撲の気持ちを知ってか知らずか彼女は僕に良く話しかけてきた。
僕はそっけない態度の反面、気持ちはいつも舞い上がっていたし。
家に帰っても彼女に逢いたくて話しをしたくて、逢えるはずもないのにフラフラと日が暮れるまで散歩をしたりした。
下校する時もさりげなく時間を合わせたりしていた。
まさに恋いに焦がれ、胸を締め付ける想いを知ったのはこの時が初めてだった。

昔の僕を少し思いだし、胸を切なくさせた。
今のあゆみの気持ちを少しだけわかってやれるかもしれない。
だんだんと歳を重ねる度に別れに馴れて免疫が作られてきた。
初恋が一番切なくて一番美しい色をしていた。
それを、みのらせれる程幸せな恋はないけど・・・ただ・・・だいたいの人はそこで別れを向かえる、辛い別れを経験する。
今あゆみはその中にいるんだろう。
｢辛いだろうけど、まだいっぱい出会いはあるから、だってほら僕とノカに出会ったのだって奇跡だし、僕等に出会わなければ大家さんにも会えなかったんだよ。
まだまだそんな出会いはたくさんたくさんあるよ。｣
｢ありがとう、でももう乗り切ったんで大丈夫。
気持ちでモヤモヤしていたのがすっきりしたんで、これでよかった。｣
強がりな笑顔がとても愛おしかった。
慰めたつもりの言葉が救われる。

｢そうよ、こんなに可愛いんだもの、たかし君に女で生まれた事を後悔させてあげなさい。｣
｢フフっ大家さんそれなんか変だね、女に生まれたかった、たかしにそれを後悔さそようなんて。｣
そして大家さんはもう一度｢いただきます。｣をしてからケーキを食べ始めた、イチゴはノカのおねだりによってそこにはもうなくなっていた。
代わりに頬張ったノカの顔がそこにあった。