自由のギフト

二人の少年の視線を、僕は必死に受けとめる。
ノカも震える足を止めようとしているのか、しがみつく力が強くなる。
力では情けない話し敵わない、僕はこの睨み会いで負けるわけにはいかなかった。
時間が過ぎる、風も時間もとまり、雑音も耳に入らない、そこにあるものはノカの感触、目の前の二人の視線。
時間が止まったように長く感じる。
やがて二人は制服の子を地面に突き飛ばした。
そして僕を睨んだまま唾をはいて反対の通りに去って行った。
耳に当てた携帯からはやけに爽やかな声が僕に質問を繰り返す。
その声をボタンを押して遮断すると、ヘナヘナと腰をぬかしたようにしゃがみ込み、ノカと同じ視線になる。
そこには目に沢山涙をため、ひくひくと鼻をすするノカがいた。
胸が痛んだ。
僕はこの子の恐怖に気付けなかった。
他人の心配じゃない、すぐ近くの助けを自分の小さな正義感で見失っていた。
後悔、ノカに恐怖を感じさせた事への後悔、胸の痛みは僕の目からも涙をながそうとする。
僕は出来るだけの優しい笑顔を作りそんなノカの頭を撫でる。
三十間近の人間が怖いんだ、ノカが怖くないわけがない。
「ごめんね」ともう一度僕は優しくノカの頭をなでる
とたんに鼻水と涙が目があふれだし声をあげてなきだした。
僕はかたひざをつきノカを抱きしめた。
抱きしめたかった。
それで彼女が安心出来るなら。
それで彼女の恐怖が薄らいでくれるのならば。
僕はいつまでだってそうし続ける事は出来る・・・。

「ごめんね。」