思った通りに階段の下で待つノカの足元には、だらし無く二本の紐が地面に伸びていた。
今度はきちんと結んでやりようやく準備完了。
「結ぶの弱すぎだよ、だからすぐほどけるんだよ。」
「優しくやんないとちゃんと蝶々にならないもん」
口をとんがらせながら差し出す手を握り僕等は目的のない散歩に向かった。
あれ、幸せかも。
最近ふと感じる事がある。
洗濯物の石鹸の香り、雲一つない晴れた日の空の下、夕食どきのカレーの匂い、かまう事をしなかった少しの出来事が懐かしさを生み感慨に浸らせ僕を温かな気持ちにさせる。
この日もそうだったそんな気持ちに少し冷え始めた空気がそうさせていた。
だからかな、普段なら耳に届いても聞き流すはずの、殺伐とした声と物音。
僕は自然とノカの手をひき、音のする方へ足を向けていた。
ビルとビルの隙間、幅は二メートルもない路地、後ろも前も通りを行き交う人がちらっ、ちらっと姿を一瞬だけ覗かせ消えていく、出来事には気付かない。
気付かない事にしている。
僕はそんな路地に足を踏み込み、正面に出来事を捕らえる。
ノカの握る手に力が入り、僕の足へ身を寄せる。
目の前の現実に体が強張り、本能的にノカをかばう体勢になる。
四人の若者、二人は制服を着ているので高校生か中学生なのだろう、もう二人も制服は着ていないが年は同じぐらいに見える。
僕は気持ちに反して、一歩、二歩と足を進める、その足にはへばり付くようにノカが抱きついている。
なぜ、進んでいったか?それは遠目から制服を着た方の二人が女の子に見えたかで。
しかも一人は地べたに倒れており、もう一人が私服の二人を相手にしている劣勢の状態、腕っぷしには全くもって自信がない僕でも見過ごせなかった。
110番携帯を耳にあて、思い切り叫んだ。
「なにしてんだ!警察呼んだぞ!」
大きな声にしがみついているノカの体がビクッと反応する。
その声に四人とも僕の存在に気がつく。
僕よりもきっと十歳近く年が離れている、それでもちゃんと僕はビビっていた。
こちらを捕らえる視線。
それに悟られないよう精一杯相手を見返す。
しがみついている足がガタガタ震えているのを感じたノカには僕のヒビリ具合が伝わっただろう。
今度はきちんと結んでやりようやく準備完了。
「結ぶの弱すぎだよ、だからすぐほどけるんだよ。」
「優しくやんないとちゃんと蝶々にならないもん」
口をとんがらせながら差し出す手を握り僕等は目的のない散歩に向かった。
あれ、幸せかも。
最近ふと感じる事がある。
洗濯物の石鹸の香り、雲一つない晴れた日の空の下、夕食どきのカレーの匂い、かまう事をしなかった少しの出来事が懐かしさを生み感慨に浸らせ僕を温かな気持ちにさせる。
この日もそうだったそんな気持ちに少し冷え始めた空気がそうさせていた。
だからかな、普段なら耳に届いても聞き流すはずの、殺伐とした声と物音。
僕は自然とノカの手をひき、音のする方へ足を向けていた。
ビルとビルの隙間、幅は二メートルもない路地、後ろも前も通りを行き交う人がちらっ、ちらっと姿を一瞬だけ覗かせ消えていく、出来事には気付かない。
気付かない事にしている。
僕はそんな路地に足を踏み込み、正面に出来事を捕らえる。
ノカの握る手に力が入り、僕の足へ身を寄せる。
目の前の現実に体が強張り、本能的にノカをかばう体勢になる。
四人の若者、二人は制服を着ているので高校生か中学生なのだろう、もう二人も制服は着ていないが年は同じぐらいに見える。
僕は気持ちに反して、一歩、二歩と足を進める、その足にはへばり付くようにノカが抱きついている。
なぜ、進んでいったか?それは遠目から制服を着た方の二人が女の子に見えたかで。
しかも一人は地べたに倒れており、もう一人が私服の二人を相手にしている劣勢の状態、腕っぷしには全くもって自信がない僕でも見過ごせなかった。
110番携帯を耳にあて、思い切り叫んだ。
「なにしてんだ!警察呼んだぞ!」
大きな声にしがみついているノカの体がビクッと反応する。
その声に四人とも僕の存在に気がつく。
僕よりもきっと十歳近く年が離れている、それでもちゃんと僕はビビっていた。
こちらを捕らえる視線。
それに悟られないよう精一杯相手を見返す。
しがみついている足がガタガタ震えているのを感じたノカには僕のヒビリ具合が伝わっただろう。



