メンフィスソウルの様なメロディーで、ピアノやベースは、シンプルなバック演奏なんだけど、俺はそれに併せて絶妙なタイミングでギターバッキングを入れていかなければいけない。


間奏部分でベースとドラムがタイトな演奏をするのを、ギターリフが膨らまして、それをピアノで心地よく包み込んで行って貰わなければ、曲が成立しなくなって仕舞う。


かなりバランスの難しいKYUの作ったこの曲は、上手く出来れば、ヒット間違いなしなんだがなぁ。


練習段階で俺達だけでレコーディングしたCD-Rを聴いた本堂さんが、かなり渋い顔をしていたって支社長が言ってたからなぁ…。


この曲だけで何時間掛かって仕舞うんだろうか!?


なんて事を考えていたら、西条店長と本堂店長がやって来た。


俺達は、直ぐにブースの中に入り、準備に取り掛かった。


アンプの設定をして、音併せてをして、軽く個人練習をしていたら、西条店長が


『皆、準備は良いかな!?』


何故か疲れた顔の西条店長。


ジョージがクルリと全員を見渡してから,


「OKです。」


と言って、キーボードの上にソフトに指先を乗せた。


『じゃあ本堂、いこっか!』


と言ってから、マイクに向かい、


『それじゃあ、チョンチョニ カジャからよろしく!』


と言う声が、ブースの中にあるスピーカーから聞こえてきた。


ケントが、


『じゃあ、いくぜ!

1.2.3.4♪~♪~!』


いよいよレコーディング最終日、残り3曲。


まずは、1曲目の
《チョンチョニ カジャ》
からだ。


いつもニコニコしながら演奏しているジョージも、この曲はさすがに緊張して強張った面持ちで演奏している。


『ストップ!

チャンス、ギターバッキング、もっとしっかりしろよ!

ベース、微妙にドラムとずれてるぜ。

ドラム、テンポは良いが、キーボードの音を殺さない様に、もっとしなやかに演奏してくれよ。

ヘビーメタルじゃ無いんだからな!』


「もう一度頭からお願いします。」


『わかった。

後は……、キーボード、頭はピアニシモから8章節かけてクレッシェンドしていくんだからな!

早い段階で音が大きくなりすぎだから、もっと押さえ気味でよろしく!

それじゃあ、もう一回。』


「1.2.3.4♪~♪!」